第二章

「なんの話を、してるの……レゾン」

「ヴィオレをハイジアにするとき、私は封印計画の説明と共にヴィオレの必要スペックについて説明した。ハイジアをヒトとして扱わない計画に、ドクター・御堂が反発することを理解していながら、私はその人選を覆さなかった」

 足が震える。

 思わずヴィオレは柱へ手をついた。そうでもしなければ立っていられない。

 御堂祐樹は唯一ハイジアを人間扱いする科学者だ。そんなことは下層の研究所内では当たり前の認識で、当然レゾンの認識もそうだっただろう。

「つまり、私は……私が失敗作になるのは、決まってたことだったの?」

「ドクター・御堂が私の計画を無視する確率は六七パーセントだった。それでも私が彼にヴィオレを託したのは、計画までの間、少しでも大切に扱ってくれる科学者の元に、送ってやりたかったからだ──」

 ヴィオレはなにも言い返せなかった。

 言葉を失っていた。寄る辺を失っていた。立っている地面すら崩れていきそうだった。

 ヴィオレが失敗作になってしまったのは、どうすることもできない失敗の積み重ねではなかったのだ。

「すまない、ヴィオレ。私の、独りよがりな、自己満足だ」

 ヴィオレは金属球から目を反らした。

 自分が失敗作であることは、仕方がないと思っていた。

 念動力のペストは、浅間が初めて相対した脅威だった。

 だから、念動力のハイジアを作るのだって初めてのことだっただろう。

 誰だって最初は間違える。念動力のハイジアがうまく作れなかったのは、きっと単純なミスで、次また同じペストが現れれば、思い通りのスペックが発揮できる。