第三章 終末にはまだ早いと精霊魔術師は云う
「骸骨を操るお前の能力は厄介だ。だが致命的な欠点がある」
欠点。
それも致命的な。
イアンは、ヘルを指さして淡々と告げる。
「お前(根源)の認識をずらせば全てが狂う」
イアンは続けて、
「ああ。それはそうと、精霊風情が一体どこではしゃいでいるのか──分かっているんだろうなあ?」
ゾアッ!! と、イアンの周りを漂う空気が気でも当てられたかのように震えだした。ともすればイアンの存在自体に大気が恐れをなしているように、ただただ圧倒されているかのように。
それはヘルにも伝染していた。
瞳孔を揺らしながらじりじりと後退る。
爆発に次ぐ爆発で裏通りは瓦礫にまみれていた。
ここは確かに普段から人通りは少ない方だし、住人同士の近所付き合いもほぼ皆無という居住区としても人間性としても寂れ切ったところではあるが、そんな殺伐とした空気感を好む人間は割かし多い。
イアンもその中の一人だった。
それに、一口に人間関係が希薄だといってもコミュニティーは場所それぞれであり、また人それぞれでもある。
何を重んじ、何を好み、何を大事とするかは、人によって異なるのだ。
「知らぬと言うなら現在地を教えてやる」イアンは、自分の心臓を掴むようにポンチョの胸元を握りしめる。「ようこそ裏通り」その手は、「歓迎する」腹の底から込み上げてくる怒りで震えていた。
「──骨も、残らないと思え」
数瞬の後、空気が混沌する程の殺意が、まき散らされた。