第三章 終末にはまだ早いと精霊魔術師は云う

「生きて帰ってきたら、清算活動に意欲を燃やせよ」

 しかし、蓋を開けてみればなんのことはない。

「あの精霊の子供を救えるのは、お前だけなのだから」

 例え無免許であろうが、闇医者であろうが、外法であろうが、命を助けたい。

 イアンはどこにでも居るような、ただの医者だった。

「行けよ。脳筋」

 幻覚か幻聴か。

 横顔だけ覗かせて薄く笑うイアン。

 闇医者の意思を読み取ったリッキーは、歯をギシリと噛みしめて壁から背を離し、そのまま全力で瓦礫の山を駆け抜けた。