第二章 危殆はトラブルと共に


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 小さな白い羽根が降り注ぐ。

 それはまるで綿雪のように柔らかく舞い降り、床に落ちると同時に消えて失せる。

 羽根の発生源は幼女の背中。小さな背から伸びた幼女には不釣り合いな大翼からおびただしい量の羽根が発生している。

 肩甲骨のあたりから生え、生え出で、生え伸びた翼は微動だにしない。にも関わらず、幼女の身体は浮遊する。それに伴い桃色の髪も重力に逆らってフワリと浮いていて、まるでティアだけが重力の概念から切り離されているかのような錯覚さえ覚える。

 ギョロリ、と幼女の赤眼がリッキーとイアンを捉える。

 光を失い濁った瞳の奥には、幾重にもなった魔法陣が浮かび上がっている。

 ──あの薬じゃ駄目だったのか……!?

 焦燥するリッキーだが、もしも魔薬(エリクシル)が駄目であったのならティアの身体を蝕んでいた青痣が消える事はなかったはずだ。よって魔力の回復自体は成功していると見て恐らく間違いはない。

 だから、ティアの背中から翼が生えたのは魔力不足とはまた別の問題である可能性が高いと推測する方が理にかなっている。

 この状況の判断をイアンに求めようとリッキーは視線を送るが、イアンもまたリッキーと同様に変貌したティアの姿に目を点にして呆けていた。

「P■urqu■※ est-ce que v■us c■mbattez?」