第二章 危殆はトラブルと共に
この分でいくと、フリージアから頼まれた言伝も今言うべきではない。そう判断したリッキーは、魔薬(エリクシル)を片手にイアンの下へ駆け寄った。
「早かったな脳筋」
振り返りもせずイアンは言う。
イアンの周囲には本という本、薬草という薬草が散らばっており、言葉通り出来得る限りの事を施してくれているようだった。しかしそれでも回復には至らなかったらしい。幼女の症状に向けられたその表情は忌々しげだ。
「で、目当ての物は、あったのか?」
「おう。物分りのいい店員さんで助かった」
言いながらリッキーはテーブルの上に瓶を置く。怪しく微弱に緑色に発光する妙薬。魔力回復の助長、自然回復力の底上げを促す液体が詰められた瓶を。
精霊契約が最後の手段だとすれば、この薬は幼女の魔力を微量だけ回復し、かつ現在機能していない魔力穴の活動すら取り戻せるかもしれない最後の防衛ライン。
だがこれは、ただ単純な希望的観測である。
リッキーという素人の願いである。
幼女にこの薬が効くかなんて分からない。魔力穴がどんな構造をしているかも分からないし、元より、人間の体の構造すらろくに分からないけれど、何をしたらいいのかさえ分からないけれど、それでも、何とかするしか無い。
「いい判断だ」
イアンが魔薬(エリクシル)を見ながら、そう言った。
ともすれば、暗にリッキーの思考を読み取ったとでもいうように。希望的観測を傍観したとでもいうように。
しかしながら懸念もある。