第二章 危殆はトラブルと共に
となれば、服用前にイアンに確認させるのがいいのだろうとリッキーは簡単に考えて完結させる。
ともあれ、金がないので持ち帰りができるかは不明ではある。
「え? お金? いいわよ別に。気にしなくても」
という言葉に、リッキーは再び面を食らったのだが、
「あなた。見たところ薬とは無縁そうなのだけれど、ここに来るって事は紹介でしょう? というか、ここは紹介か仲介でしか来れない所なのよ。ああ良いのよ。誰から紹介を受けたかなんてそんな野暮な話。予測はつくわ。大方、銀髪……銀髪でポンチョなあの男ってところかしら」
フリージアは、だからと続けて、
「代金については、あの金持ちから請求する事にするわ。そして私には、あの男から金をふんだくる権利がある。あなたは払わなくていい。私は、どちらかというと貧民の味方でありたい」
さらりと酷い事を言われた。
というより、どちらかと言うと足元を見られた。
そんな事をされては、闇医者に対するツケが雪だるま式に大きくなっていくだけなのだが、今回の事に限っては仕方がないと見切りを付けるのが正解であろう。
だって、自分が諸々の事情を背負うだけで幼女が助かるのだから。命を助けることができるかもしれないのだから。
金ならば後からどうにでもなる。命は、今だけだ。
とんぼ返り。
裏通り。
イアン宅。
雨脚は一向に弱まる気配がない。
傘も差さずに道を突っ走ってきたリッキーの衣服が水浸しになっていた。
そのままイアン宅に入ったので室内まで水浸しになってしまったのだが、幼女に手を施すイアンはそれどころでは無いようだった。