第二章 危殆はトラブルと共に

 ならば、なぜ幼女は魔力穴が機能していないのか。その真相は定かではないが、推測することならできる。

 例えば人間が一定の体温、一定の体力が無ければ、本来負けるはずもない病原菌にも立ち向かえないように、魔力穴という体機能を稼動させるだけの魔力すら幼女には無かったのではなかろうか。

 魔力をかき集めるために消費する魔力の量など、恐らくたかが知れている。

 そしていま目の前にある魔薬(エリクシル)に魔力回復の助長という、自然回復力の底上げという効力があるのならば、魔力の回復と同時に魔力穴の再稼動という結果だって期待できる。

「なあ、店員さん」

 リッキーがそう言うと、女性は緩く三つ編みにした髪を指先で遊ばせながら、

「フリージア。そう、呼ばれてる」

 起伏のない声で告げる。

 名前を教えられるのもなんだか今更でむしろ今かという気持ちもしないでもないが、それについての突っ込みは割愛して話を進める。

「そうかい。フリージア、聞きてえんだが、その薬は精霊には効くのか?」

 ここまで来て実は精霊には無効です。

 などと言われるものならば骨折り損も骨折り損。どころか、全身骨折級の無駄足といっても過言ではない。

 そんなリッキーの疑問にフリージアは即答する。

「元が人間用ではあるけれど大丈夫だと思うわ」

 聞くに、魔力関連の薬品の作用については人間と精霊で差異は概ねないらしいとの事だった。

 ただし確実ではないから専門知識を持った人間に確かめるのが一番安全ではあるとの忠告は受けた。