第二章 危殆はトラブルと共に


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 春先の冷たい雨が体温を奪う。

 だがこれよりも、もっと、もっと耐え難い苦痛に見舞われている幼女のことを考えれば、この程度の冷たさなんてリッキーにはどうでも良く思えた。なにより、やるべき事が明確になってきたのがせめてもの救いだった。

 リッキーは大通りを走る。傘も差さず。

 その理由は、外へ飛び出る直前にイアン宅にて交わされた会話に起因している。

 話は少し前に遡る。

「まずは、この子供の魔力を回復させる」

 というイアンの言葉にリッキーは面を食らった。

 回復が可能ならば精霊契約に至る必要もないのでは。と申し立てたが、どうやらそんなに上手い話ではないらしい。

「回復といってもあくまで一時的にだ」

 精霊契約以外で魔力を補給する方法は、無いわけでは無い。

 まず、空気中を漂う微量のそれを表皮にある魔力穴から吸収する方法。

 次に食物から直接摂取する方法。

 しかしながらこの二点については、もはや事足らないと切り捨てたばかりだった。

 空気中を漂う魔力を取り込もうとしても幼女にはそれを実行するための魔力穴が機能していない。

 食物から摂取するにしても摂取できる量は絶望的に少なく、もしもまともに取り合おうとすれば、それはもう途方もない数の食糧を食べ続けなくてはならない。

 それでも、

「可能性があるとすれば食べ物」

 とイアンは言う。

「食べ物から摂取できる魔力の量は確かに少ないが、含有量にはそれぞれ差がある」

「……どういう事だ?」