第二章 危殆はトラブルと共に
「栄養と同じさ。例えば野菜が含有する物としては、ビタミン、リン、カリウム、亜鉛あたりが挙げられるのだが、保有している量はものによって違うだろう」
「……確かに」
「という事は、だ。食べ物が保有する魔力量は全て一定ではない」
更に、とイアンは言う。
「世間にはとある効能に特化した物も存在する。そうだな……肝機能を助け、有害物質を除去しようとする物まであるのだからそれを鑑みれば、どうだろう? 魔力を多量に含んだものがあっても不思議ではなくないか?」
リッキーはそれを茫然としながら聞いていた。
肉からはタンパク質を摂取できる。
野菜や果物からは食物繊維やビタミンを摂ることができる。
それぞれにはそれぞれの。各々には各々の働きがある。
精霊の肉があればそれを食べるのが手っ取り早そうだがと物々しい事を述べるイアン。さすがにそれは望めないにしても闇医者の口ぶりからするに、暫定的に幼女の命を引き延ばせる物がある可能性が望める。
残念ながら本質的には救いからは程遠い。しかし、リッキーにとっては活路だった。
「……ようやく話が見えてきやがった」
とリッキーは呟く。
「そう」
頷くイアン。
「要するに」
「つまりは」
二人は一拍置いて、
「それを見つけてくれば、後は俺次第ってことだな」
「それを見つけてくれば、後はお前次第だ」
声が重なったことに恐ろしく怪訝な表情を浮かべた。
間違ってもこの二人は相容れぬ存在だ。
普段ならば言い合いの殴り合いの取っ組み合いになるのだが、そんな事をしている暇がない事ぐらいはお互いに理解していた。