第二章 危殆はトラブルと共に

 そんな事を思うも、リッキーは口には出せない。

 例え心の中でそんな疑心を抱いていたとしても、リッキーは何も言えない。

 自分ではどうしようもできなくなり、他人にすがっているという現状を鑑みれば、誰かにとやかく意見できるような立場にいない事ぐらい理解しているから。

 そんなリッキーの心の内を読み取ったのかイアンは言う。

「お前の考えている事は大体分かる。大方、私もその他大勢と同じで精霊の治療なんて出来ないんじゃないのかと思っているのだろう? はあ、悲しいというか、嘆かわしいというか、腹立たしいというか。まったく、」

 イアンはため息を吐き出してからサラリと言い放つ。

「不愉快極まりないな」

 イアンの口は止まらない。

「表で医学を振りかざしている奴らがどんな安い腕を振るっているのか興味なんて無いし、知りもしないが。奴らと私では決定的な違いがある。第一に、国家からおりる医師免許の有無について、医者は、まずそれを取得しなければ活動に従事する事ができないのだが、私はそれを持っていない」

 偉そうに言うことではないが。

「第二に、専門とする分野について、医者はそれぞれがそれぞれの利益を得るためのパーソナリティーを保有しているが、私にはそれがない。第三に私は医者ではない。あんな無能共と一緒にするな」

 きっぱりと。はっきりと。

 言い訳も何もなしにイアンは全てを否定する。

 では、この男は医者でないなら何だというのか。