第二章 危殆はトラブルと共に
「そうですね。ならば話は簡単です」
「と言いますと……?」
「探せば良いのですよ。子供を」
ヒューゴーの言葉を掴みきれないクローク姿の男は、小さく首を傾げる。
「お言葉ですがヒューゴー殿。捜索ならば幾日も行っております」
「はい。それは既に何遍も聞いています。しかし、そうではない」
「……」
「逆にお尋ねします。今回の失踪事件には、解決の糸口となる明確な証拠がありますか?」
「いえ……」
「だとすれば見つからない者を探しているのだから見つかる訳がないんですよ」
相も変わらず走るペン。いや、先ほどよりも軽快に。
対するクロークの男は困惑気味に。
「では、見つからないから諦めるのかといえば決してそういった話ではなく。その逆で、」
ヒューゴーは、「だから」と結論付けて告げる。
「代わりの子供を見つけてやればいい」
この言葉を皮切りにクローク姿の男の表情が完全に曇った。それこそ、窓から見える空の灰色のように。
「証拠。実証。過程。それらは結末の前に無力です。今回のような案件はまさにそうだ。目撃者どころか、それに通ずる何かも見つかっていない」
ここまでくればクロークの男もさすがに気付く。
ヒューゴーが何を言わんとしているのか。
つまりは、
「…………失踪した子供たちは、死んでいる事にすると……?」
クロークの男が暗い声を吐き出す。
ヒューゴーは「代わりの子供を見つけてやればいい」と言った。しかしそれでは親元へ戻した時に別人だと分かってしまう。