第一章 トラブルは横暴幼女と共に

 さらにリッキーの家は山の麓にあり、キノコや原木はそこいら中に群生している。

 以上のことから総合的に判断して、初期投資が少なく、大量生産が可能であり、尚且つすぐに始められるので、

 ──キノコ生産は有りだ。

 といった方程式を作り上げて何だかいけそうな気になっていたリッキーだったが、記事の後半を読んで絶望した。

 本文より一部抜粋。

 キノコには神経系の毒を有する種類が存在するので、知識のない素人は野生するキノコの菌を元に、むやみやたらと栽培をしないように。

「…………」

 情報誌をぐしゃりしてポイ。

 無言で放った紙くずは、近くの鉄かごに吸い込まれていった。

 つまるところ、簡単でおいしい話などこの世には存在しない。例えあったとしても、それは胡散臭い詐欺か何かだと相場は決まっている。逆に手間がかかるものならば儲けになるのかと言われればそれも違うが、衣食住のうち、住において持っていたら便利な物を扱う商売だったりすればまた別になってくる。

 例えば、

「よってらっしゃーい。これから雨期を伴うアザリアの春ー。素材は紙だが滅法丈夫! 雹が降っても跳ね返す! 伝統工芸バンガサはどうだい?」

 道の片隅から聞こえてくる威勢のいい声。

 何かと思って広場に繋がる通りへ目を向けてみれば、着物と呼ばれる服を身にまとった東方風の男が露天商を開いていた。

 ──傘?

 リッキーは東方風の男が広げたそれを見て、首を傾げた。