第一章 トラブルは横暴幼女と共に
買うことができないのなら、せめて読めるところまで読んでしまおうとページを送るリッキー。不意にがさりと、足に紙が引っ掛かった。
くたびれたそれを拾い上げる。
見ると、その紙は街で定期発行されている情報誌だった。
日付は今日。
記事に目を落とすと、最近街で騒がれている事件について書かれている。
リッキーは眉を寄せ、心の中で大見出しをなぞる。
──子供が失踪……ねえ。
その下には出版元から、子供の外出はなるべく避けるのが得策かもしれない、とのコメントが書かれている。
そういえば、とリッキーは街を見渡してみる。
二日前に訪れた時は気付きもしなかったのが、子供の姿があまり見えない。街の人々もこの記事を読み、万一に備えているという事なのだろうか。
とはいっても、所帯なし子供なしのリッキーにはまるで関係のない話。むしろ、さらっと目を走らせているうちに飛び込んできた別の記事の方がリッキーにとっては興味が湧くものだった。
情報紙の下段。広告欄一歩手前のところに書かれている見出しはこうだ。
キノコブーム。
そんな脈絡もない文面。あるのは胡散臭さ。
しかし、金欠のリッキーの心を掴むには十分すぎる文句だった。
記事を読むに、高騰を続ける野菜の代わりとしてキノコが注目されているらしい。
伐採した原木に菌を植え付けて霧吹きなんかで湿気を保ってやれば勝手に成長して増えることを鑑みれば、畑仕事のような面倒臭さもないから生産側としては管理が楽だろう。
それにキノコは低カロリーで食物繊維が豊富だ。健康面を気にする人々にとっては以下略。