第一章 トラブルは横暴幼女と共に

 形状は確かに傘なのだが、それを作る素材が竹と紙だというから納得がいかない。オマケに雹まで防ぐときた。製造の工程は詳しく分からないが、どちらかというと雨にも負けそうな気がする。

 と、疑いの眼差しでバンガサを見つめていると東方風の男が満面の笑みでリッキーに声をかけた。

「お兄さーん。傘、買ってくかい?」

「いや。金持ってねーし俺」

 軽く返すが東方風の男はさらりとスルーして全く引く様子がない。

「安くしとくよ? ほら、今なら一割引き!」

「ホントに金持ってねーから。野菜買って底尽きたから」

「あーそんじゃあ二割引き!」

「あのね、だからマジで金持っ」

「まだいくかい!? 買い物上手にも程があるよ兄さん! わかったこっちも商売人だ!」

「おーい人の話聞いてますかー? お前の耳はロバの耳ですかー?」

「ああもう赤字覚悟の大サービス! 半額でどうだ! 買うかい? 買うだろ? ていうか買ってけい!!」

 白熱していく東方風の男の威勢。

 耳元で叫ばれ、リッキーの鼓膜が不調を訴える。

 指で片耳を塞ぎながらこの場を去ろうとしたら肩を掴まれ止められた。

「兄さん頼むよ。これ売ってかなきゃ故郷に帰るための金が。な。人助けだと思って! 一種の寄付だと思って!」

 寄付だなんだと喚いているが、金が欲しいのはむしろこっちの方だとリッキーは沈黙したままこめかみをピクリと動かす。