第一章 トラブルは横暴幼女と共に
買い物は無事に済ませた。
人混みの中を力づくで通ったが紙袋の中に問題はない。だが、その代わりに財布の中が異常事態に陥っている。
まさか野菜が高騰しているなんてリッキーは思ってもみなかった。
先ほど八百屋の店主から聞いた話しによると、今年は冬季前から続く雨不足や極端な温度差が原因で野菜の出来が思わしくないらしく、値段も跳ね上がっているのだとか。
確かに言われてみれば雪も少なかった気がする。とリッキーは季節を振り返る。しかし普段の二倍近くも値段が違うなんて、誰が予測できただろう。
こんなに出費がかさむのだったら、もう一層のこと家の裏に畑を耕して自家栽培でもした方がマシなレベルだ。自分の分は取っておいて、余ったら街で売れば収入にもなるだろうし。
ただ、そうは言っても八百屋は街に飽和するくらいあるから、どうせ売るなら他にはない何か珍しい物でも扱ったほうがより儲けが出そうな気もする。
もし条件を絞るならば三つ。
一、初期投資が少ない。
二、数を稼げる。
三、尚且つすぐに始められる。
この条件に当てはまる物といえば……。
物と……いえば……。
何かないかと考えてからややあって、リッキーは心の中で苦悶の声を上げる。
──…………思いつかん……!
そもそも、簡単に儲けが出る方法をすぐに閃くなら今日日無一文などにはならない。そんな頭があれば定職に就いている。
自分には学もなければ金もないことを再確認してしまったリッキーは、顔をゲッソリさせて横を向く。すると、広場の端にぽつんと佇む小さな古本屋が目に入った。