第一章 トラブルは横暴幼女と共に


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「安いよ! 買得だよ!」

「そちらのお客さんより値段張る方!」

「アザリア名物、岩石まんじゅうはいかがですか!?」

「いらっしゃいませー」

「西海で取れたおいしい海藻」

 人混み、人混み、人混み。

 大勢の人々で賑わう街の一角。

 ここは、主に食材を扱う店がずらりと並ぶ広場である。

 右を向けば魚介類を大量に仕入れた店が、左を向けば新鮮な野菜を山積みにした簡易テントが、そして正面には焼きたてのパンを並べた専門店がずらりと軒を並べている。他にも茶葉を置いたこじんまりとした商店や調味料を並べる店もあったりと、山間部の街の店構えとしては品ぞろえが充実している。

 現在この広場は時間割引中のため、尋常ならぬ盛況を見せている。

 安いことは確かだが、この人を人で洗うような人だかりに身を投じたが最後、揉みくちゃになることは必至だ。

 そんな人混みの中をやっとこさ抜け出したリッキーは、勢い余って前にいた女性の背中にぶつかった。

「悪い、大丈夫か?」

 エプロン姿の女性は後ろを振り返り、片手を上げて応える。

「お気遣いなく。というかそっちこそ大丈夫?」

「ん? ああ」

 言われてリッキーは腕に抱えた紙袋の中身を確認する。幸い、購入したばかりの野菜が潰れているようなことはなかった。

 大丈夫そうだ。と言いながら紙袋から視線を戻すと、

 ──お?

 そこに女性はもういなかった。

 狐につままれたような気分を切り替えるため、リッキーはマフラーを直しながら腕に抱いた紙袋を持ち直す。

 街の修繕を終えたリッキーは、当初の目的を果たすためにこの広場に訪れていた。