第一章 トラブルは横暴幼女と共に
「君らも単体ならすっごくいい子たちなんだけどね」
「バカヤロー騙されんな。あいつはものっそい腹黒なんだぞ。も一個くれ」
「そうは思えないけど。調子に乗らないでね」
店主は催促するように出されたリッキーの手をパチンと弾きながら続ける。
「というか、街の修繕を手伝いたいなんて一体どんな風の吹き回しだい? リッキーさん」
きっと、近くにいる人間のほとんどが同じ事を思っただろう。
破壊だけしてそのまま放置という、これまでの騒動直後の立ち振る舞いを鑑みればそれは当然だ。
ただ、これ以上ほったらかしにしておくとイアンにとんでもない借りを重ねて作りそうで怖いし、しかも今日は王都からの視察が来るからいよいよヤバいと思って修繕に参加した。なんてとてもじゃないがリッキーの口からは言えない。
「アレだよ、ほら、俺の良心が」
それ以前に、王都から客人が来るという事を街の人間に漏らしてはいけないとアイリーンから釘を刺されている。
なんでも、公平な裁定をするには普段の風景を見なければ意味が無いとかで、街の人間には口外してはいけないという話。要は取り繕うなという事らしい。それならばアイリーンがリッキーに喋った時点でアウトのような気もするが、指摘をしたら殴られた。
「良心あったらまずは破壊衝動抑えようねリッキーさん!」
「努力はしてんだけどね。内なる力がね」
「反省はしてないんだね!? その口ぶりからすると反省はしてないんだね!?」
「後悔はしてるよいやまじで」
「後悔は反省とセットにしないとただの独白だからね!?」