第一章 トラブルは横暴幼女と共に

 そのまま設置したての家屋に背を預け、大通りに目を向けてみれば、破損した石畳を修復する人間が数人いた。察するに街が派遣した人員だろう。そして、そこを行き交う人々の数も次第に増えてきている。

 それにしても、

 ──割かし早く終わったな。

 いや、正確にいうと街の修復自体はまだ完全に終わった訳ではない。

 今はただ単純にリッキーができる仕事が終わったというだけの話。あとは石畳の修復と、アイリーンが手配した例の職人が来れば全行程完了。恐らく、あと三十分もすれば街の景観は元に戻る。

 リッキーがアイリーンから聞いた話によれば、王都からの客人は昼前くらいに到着するということだったから、時間は持て余すほどあった。

 そんな感じでくたりとしてしていると、

「はいリッキーさん、お疲れ様」

 店主が調理食品を差し出しながらリッキーの隣に座り込んだ。

「何? 貰っていいの?」

「ウチの自慢のブリート。食べてって」

 手渡されたそれは、小麦粉で作られた薄生地で挽肉や野菜を包んだ軽食。

「まじでか。こんなんじゃ腹の足しにもなんねーけど助かるわ」

「あのね、人の親切なんだと思ってんの?」

 早速ブリートをもふもふと頬張りながらリッキーは返す。

「しかしおっさん、さっきは悪かったな」

「いやいや良いんだよ。いや、良くはないけど」

「あの青瓢箪さえ居なけりゃよ」

「うん。もうね、君ら二人が揃ったら迷わず逃げるってみんなで決めたからね」

 半ば諦めたような店主の失笑。

 当然ながらリッキーは、例の都市伝説の存在を知らない。