第一章 トラブルは横暴幼女と共に


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 ゴスン、と重量感のある音と共に砂埃が巻き上がった。

 敷き詰められた石畳の空白部分に一階建て家屋が設置された音だ。普通ならば地面に土台を作り、その上に建材を重ねていくだが、今行われた作業はそれら全てを無視している。

 出来上がりの家屋を設置するというのは不可能な話ではないが、そんな力技をやるにはそれなりの人手と道具が必要になる訳で。しかしそれら全てを一人でまかなうことが出来るリッキーには縁のない話だった。

「リッキーさん、もうちょい気持ち右だねこれ!」

 うっすら立ち込める砂煙を手で払いながら、先の騒動で店舗を投げ飛ばされた店主が言う。

「いいよこんぐらい傾いてた方が。なんか味あるもん」

 右に倣い、手をパタパタさせながらリッキー。

 設置された家屋は地面のくぼみから若干外れ、斜めに傾いていた。

「欠陥住宅になっちゃうよ私の店!」

「大丈夫。老舗はね、みーんなガタがきてるもんなんだよ」

「いや間違いではないけれども!」

「ほら、なんかちょっと汚れて逆に箔付いたよおっさん」

「どの辺が!?」

 先ほどとはうって変わって軽快な会話。

 この店主、騒動の最中(さなか)にいた時は足を震わせ、耐え切れず地べたに座り込んでしまうほど恐怖していたのだが、今は状況が違う。

 リッキーとイアンが揃っていない。

 実際のところ、リッキーは普段は比較的温厚で友好的な人間だ。