第一章 トラブルは横暴幼女と共に
思いつくとすれば一つしかなかった。
街の修繕。たった一回のそれでこれまでの振る舞いが帳消しになる訳もないが、リッキーはこの街に大いに世話になっている(衣食的な意)。
なにより、出入禁止になんてなったりしたらそっちの方が困る。
幸い、時間に関しては早起きしたせいもあってまだまだ早い。家屋一軒まるまる持ち上げるリッキーの馬鹿力があれば、人海戦術も容易いだろう。
もしかするとこの手の仕事は天職なのかもしれない。
そうと決まれば話は早い。
ただ、イアンからの策略的な貸しをそのまま素直に受け入れる気は当然ながらさらさら無かった。無かったし、野放しにしておくつもりも毛頭ない。
腹立たしい限りだが、今イアンに突っかかっていては悪循環を生み出すだけだ。とりあえず、さしあたって余計な借りと混乱だけは避けるべき。
リッキーは重い腰を地べたから上げ、尋ねる。
「おい門番女。そのお偉いさんってのは、あとどんぐらいで来るんだ?」
問われたアイリーンの表情は少々困惑気味だった。