第一章 トラブルは横暴幼女と共に

「年間予算の半分が、すでに街の修繕費に回っちゃってんの! しかも今日の視察はね、今後供給される追加予算の裁定基準にも影響してくるの!」

 熱弁振るうアイリーンだが、頭蓋に響く鈍痛と戦うリッキーはそれどころではない。

 そんな状況を見兼ねてか(絶対にそんな事はないが)、それまで黙ってやり取りを聞いていたイアンが横から口を出した。

「要するにあれか。今日もしも客人の勘に触るような事があれば、追加予算の供給も危ないと」

 イアンの言葉にアイリーンは重々しく頷きながら漏らす。

「これはもう今回は、二人に修繕費を満額負担してもらうしかなさそう……」

「私は構わない。むしろ迷惑をかけてすまない」

「いつも悪いわねイアン……。巻き込まれてる側なのに」

 そんな二人の会話を聞いていると、なんだか自分一人だけが悪者になっているような気がしてならないリッキー。

 まず、イアンが巻き込まれている側だということについては完全に解釈の問題であり、一緒になって暴れているという点については同罪ということで間違いないとリッキーは頭に響く鈍痛を噛み殺しながら思う。

 そして、修繕費について。

 リッキーは、街の修繕費は街の財政で賄われているものだと思っていた。

 しかし、それはおかしな考えだと気付く。

 悪事には罰則がつきもの。街を壊したとなればそれを直すための罰金、さらには被害を受けた人々に慰謝料を払わなければならない可能性も出てくる。

 リッキーが記憶する限り、それらを払った覚えはない。