第一章 トラブルは横暴幼女と共に
その疑問に対し、アイリーンは腕を組んで答える。
「え? ああ、休憩よ休憩」
「なんだ。解雇になったんじゃねーのか」
「あんたバカ? なんでよりにもよってこのタイミングで辞めさせられんのよ」
アイリーンの口ぶりからするに、彼女が何か仕事を抱えていることが読み取れる。
「今日ね、王都からお偉いさんが来んのよ」
アイリーンは腕組みを解いて腰に手を当てながら、
「年に一度、各都市に王都から視察派遣があんの。それが今日なの」
「しさつはけん?」
「そう。街中の景観とか治安とか、そういうのを見ていくんだけど」
聞けば門番は、来客護衛と街中警備の仕事があるらしく、夜勤組であるアイリーンはこれから数時間の休憩との事。
休憩時間は仮眠に充てるようで、起きてからは街中警備に就くらしい。
その休憩の折り、移動中にアイリーンは偶然にも騒ぎに遭遇したということだった。
「街見るだけって、それ意味あんのか?」
「大アリだから困ってんの……アザリアは発掘と鍛冶で栄えてるし税収も安定してるけどね、建物たてたり人寄せしたり、それをやり繰りする為の配分予算が現状足らないの」
「まじでか。ちゃんとしろよ」
間。
「…………誰のせいだと思ってんの?」
「誰のせいだよ?」
「アンタが暴れるからでしょうが!」
再。ガゴン! と一際大きな打撃音。
頭を押さえて唸るリッキーに構わず、アイリーンは続ける。
「この際だからよーく聞きなさい!」
「あだだだだ」