第一章 トラブルは横暴幼女と共に

 それでも構わず狩りをすることはできるが、売りに出したところで大した金額にもならない可能性が高い。恐らく、雀の涙程度の換金になるだろう。

 あと一月もあればようやくまともな換金ができる程度にレートも動き始めるはずなのだが。

 ぐぅ、と腹の虫が鳴く。

 結局、朝食は食べ損ねている。

 運の悪いことにリッキーが歩く一角は、調理された食品を売りさばく店がずらりと並んでいるゾーン。

 漂ってくる香りは容赦なく飢えた嗅覚を刺激し、歩みを阻害してくる。

 店先に陳列された商品に思わず手が出そうになるが、割高な調理食品を購入してしまっては今後の家計に更なる支障をきたす。

 伸びかけた手をぐっと堪えるリッキー。

 呼び込みをしている店主と目が合った。

「………………なに俺の食欲誘惑してくれとんじゃコルア」

 たっぷりの沈黙もって八つ当たり以外のなにものでもない一言を放つ。

 店主には悪いが、今は腹の虫の居所がすこぶる悪い。

 とは言っても危害を加えるつもりはない。面を食らった顔をした店主を置き去りに再び歩き出そうとした。その時だった。

「──買う金がないなら退きな貧乏人。営業妨害になってるぞ」

 男の声。

 どこか落ち着き払ったような、それでいて聞き覚えのある声。

 リッキーはその声を聞き、びたりと動きを止めた。そしてある男を一瞬で連想。ゆっくりとした挙動で振り返る。

 願わくば、脳内に浮かんだ人物と声の主が一致しないことを。

 しかしリッキーの願いはすぐに打ち砕かれた。