第一章 トラブルは横暴幼女と共に
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背の低い二階建て石造建造物と、全長十メートルはあろう石木混造建物が入り乱れる街並み。
その後方には一際巨大な物や豪奢な物も存在し、街の中心に向かうにつれ、都市の核を担う政治関連の重要な建物や公共機関が集まっている。
街の周りは外壁で囲まれており、東西南北に設置されてある巨大な出入り口には門番が鎮座する。
アザリア。
それが、この街の名だ。
山間に存在するここアザリアは、近郊に鉱山があるため発掘が盛んである。
長方形のブロックが敷き詰められた石畳のメインストリート。行き交う人々を見れば、採掘道具片手に練り歩く者も多く、鉱山での仕事が生活に根付いていることが良く分かる。
とは言っても、決して埃っぽいわけではない。
街中に軒を並べる店舗は食材、雑貨、鍛冶に大工とより取り見取り多種多様。他にも衣類や家財道具を扱う店なども多数あり、飛び交う声の威勢が良い。
そんな活気ある街中をリッキーは歩いていた。
身に着けた簡素な麻の服はベージュ色。下半身は紺のハーフパンツとその下に黒色タイツ。足元のブーツはくたびれていて、全体的にどこか気の抜けた印象を受ける。
しかし表情には余裕がない。
リッキーは首元の黒いマフラーを口元に寄せながら心の中で呟く。
──冬に蓄えた金がいつまで持つか……。
手元の財布に重みが無い。
そっと中身を覗いてみれば、紙幣が二枚と貨幣がちょろり。
──……お前、こんなん野菜買ったら終わりだよ。
何故そんなに金が無いのかと問われれば、無職だからとしか答えることができない。