第一章 トラブルは横暴幼女と共に
寝起き直後ということもあって、クリーム色の髪が爆発している。
格好は、これも寝起き直後で仕方のない話ではあるがベージュ色の簡素な薄手の服だった。
リッキーはあくびを漏らしてから幼女を薄目で見る。
「……お前さー……分かってんの? 六日連続だよ六日ぁ」
「あのねリッキー、石上に座るとお尻が痛いというコトワザがあってね」
得意気に立てた人差し指が妙に腹立たしい。
「それは石の上にも三年と言いたいのか? 慣れろってか? この惨事に慣れろってか?」
「うさぎのつの! 早起きは三分の得!」
「よし帰れ」
言いながら小屋の扉をパタン。
閉扉の際、「ぬわぁ! ちょっと待って」と聞こえたような気もしたが、リッキーは空耳か何かだと簡単に自己完結させて再びベッドへ戻り、倒れ込んで顔をうずめた。
シーツ越しにかさりとした感触が顔に伝わる。
その正体は、シーツ一枚下に敷き詰めた干し草。
一応、干し草が広がったり散らばったりしないように木板で囲って固定してあるが、造形にまで気を使っていないので仕上がりはだいぶ無骨だ。
他の家具もそう。
全て自作。
室内中央にあるテーブルは、集積した木の端材を支柱に丸く切り取った板を上から乗せて固定しただけだし、ベッド横に設置した引き出しは収納部分こそ綺麗に設計しているが、外見は表皮を剥いだだけの木材。しかし暖炉と窓だけはそうもいかず、材料から造形までしっかりと形成されていた。
そんな大味な家具に囲まれた山小屋も住めば都というか、リッキーにとっては住み慣れた我が家である。