〇〇九

 バーミッドグロウ塗装、グランツハウス、ホームタイム・インクの三社を回り終わったシルベスタは工務店の近くまで戻ってきていた。

 結論から言えば前述した三社は競合他社であり、外壁補強の事業に手を挙げた会社だったことが分かった。最終的には経営者を欠いた所で撤退し、次期者の選任で委託事業などやっている場合ではなかったらしい。

 このことから競合他社がいなくなることで有利になるのは同じく手を挙げていたジョーンズ工務店であり、なんらかの手を使って他社の頭を消していたと思われる。という推論にシルベスタは辿り着いた。

 あとは情報を掴んでいるであろうロニと合流し、現場監督もといメイソン・ジョーンズを押さえれば────。

 と、思案しながら歩いていると突然なにかが爆発したような音が街に響き渡った。

 シルベスタは咄嗟に屈んで周囲の状況を確認し、近くにあった家屋の壁に背を付ける。

 ──テロか?

 音源のは工務店の向こう側。

 今、シルベスタがいる位置は風下だが硝煙の臭いは特にしない。

 反射的に腰に手を伸ばすがシチメンドウには銃の携行が認められておらず、そこには何もない。手持ち無沙汰感は否めないが、シルベスタは近くにあったパイプを掴んで裏通りを二本駆け抜けた。

 そして、角を曲がった所で視界に飛び込んでくる光景に我が目を疑った。

 捩じれた巻角が生えた山羊の顔を持ちながら身体は人間の怪物が、獣の腕を振るって誰かに襲い掛かっている。その誰かがロニであるという事に気付くのにシルベスタの脳みそは数秒の処理時間を要した。

 こちらに気付いたロニが声を張り上げる。