〇〇八

「なんの事業をしている所か分かるか?」

 シルベスタの問いに、ロニは首を捻る。

「グランツハウスは建築系ですけど、他の二つは分からないっすね」

「建築系か……なるほど」

「なに一人で納得してるんですか……?」

「後で話す。ちょっとこれから、この会社に行ってくる」

「は?」

「お前は現場監督の工務店に行け」

 唐突に命令され、ロニは困惑する。

 なぜここに来て現場監督の工務店の話が出てくるのか。

「失踪するであろう人物を特定するっていうお前の考えはかなり有効だと思う。だが、実際問題それは難しい」

 シチメンドウという立場的に。

「だったら、失踪している可能性がある人物が分かっている状態にある俺たちは、そっちに聞き込みをした方が早いと思わないか?」

「はぁ? ……いきなり何を言っ」

「昼、俺たちは何を聞いた?」

 そこまで言われてロニはハッとした。

 今日の作業、シルベスタとロニの班は作業員が一人不足していた。その作業員とは連絡がつかず、状況を確認中だと。

「おかしいと思わないか?」

 本日不在の作業員がどういった理由で家族の下を離れ、この街で暮らしているのかは分からないし知る由もないが、普段から遅刻も欠勤もない真面目な社員が突然仕事に来なくなったというのは、どう考えても普通のことではない。

 単純にそれは思い違いで、家に閉じこもっていた可能性も捨て切れなくはないが、それでも聴取の余地は多分にある。

 シルベスタは言う。

「情報収集が終わったら落ち合うぞ」

 集合場所は工務店前。