〇〇五
「申請は、軍舎にある軍事部文書管理課部屋に出さなければ受理されないんです」
「なるほど。じゃあ、一旦戻るしかないんだな」
「ええ、そうなのですが……」
メリーは口に手を当てて言い淀む。
「どうした?」
「はい……シルベスタさんが所属されている部署は、その……なんというか、みなさんが煙たがる仕事が集まるところですよね」
「異動したばかりでよく分からんが、そうらしい」
「部屋の場所も不便されてるんですよね……?」
そこまで聞いてシルベスタは察する。
「一等兵が閲覧の申請を出して受理されるまで、どのくらいかかった?」
「えっと……申請が立て込んでいるとかで処理に時間がかかってしまったらしく、二日……ほどですかね」
窓際部署シチメンドウの冷遇は、そんなところにまで及んでいるらしかった。
メリーの言い方から読み取れば、申請が立て込んでいるというのは嘘で、単にシチメンドウを軽視して処理を遅らせていると推測できる。
業務に支障をきたすレベルの部署間差別は、あってはならない。
「しかし、『基本的には』処理は受諾するし時間も十分程度、と部署は謳っていまして」
「受諾されないこともあるかもしれないし、時間が掛かることもある。ってことだろう?」
「大変申し訳ないです……」
肩を落として目を伏せるメリー。
「いや、お前は悪くないよ」
とは言うものの、このまま正攻法で申請を出したとしても、許可が下りるのがいつになるかは分からない。できることならば早急に報告書を閲覧したいのだが……。
そうやって顎に手を当てて思案していると、
「あのう」