〇〇五
「それは許可が下りていたからです!」
「じゃ、今日はその続きってことでひとつ」
「駄 目 で す !」
「なんだよ一回くらい見逃してくれてもいいだろカタブツ!」
「駄目ったら駄目です! このカエル顔!」
「あんだとクソ瓶底ぉおおお!」
言い争いの末、つかみ合いになる二人。
それを止めたのはシルベスタだった。
仏頂面のまま振り下ろしたチョップがロニの脳天に炸裂。頭頂部から背骨を伝って直下していく衝撃に耐えかねたロニは近くにあった受付のテーブルに倒れ込む。
シルベスタはロニを一瞥してメリーに向き直る。
そして敬礼。
「総務部庶務七課・多面担当シルベスタ・ガフであります」
それに釣られてメリーも慌てて敬礼。
慌てすぎて左手で掲げかけた敬礼を、寸でのところで右に直す。
「ぐ、軍事部文書管理課に所属しています司書のメリー・サンダースです」
「一等兵が大変な失礼を」
「い、いえ。ロニさんとは随分前から知った仲ですから。だから、いつもの事です」
いつもの事。
シルベスタは、いつもこんな馬鹿なやり取りをしているのか、という軽蔑の意を込めた目を受付のテーブルでうずくまっているロニへ向け、すぐにメリーへ戻す。
「司書殿、少し伺いたいことがあるのですが」
「はい。いや、ええっと……あの、シルベスタさん」
「なんでしょう?」
「私は司書を拝命していますが、階級的にはロニさんと変わりないはずです。ですので、どうか崩してください。それに、」
「?」
「シルベスタさんのような殿方に畏まられると、なんというか、き緊張してしまいます」