〇〇五
シルベスタとロニは中央図書館に足を運んでいた。
図書館の位置は軍舎の真隣。
接続通路があるためアクセスは非常にしやすいのだが、シチメンドウの部屋から向かおうとすると一旦地上に出なければならないのでかなり手間がかかる。というか、シチメンドウから各施設に向かおうとすれば例外なしに手間がかかるので、移動に関しては割り切って慣れるしかない。
新設部署で窓際ともなれば冷遇は仕方のないことだ。
しかしシチメンドウは、他にも致命的な待遇をいくつか受けている。
それうちのひとつが重要書類の閲覧権限の有無、である。
報告書の提出は義務であるから制限はないのだが、貯蔵されているそれを読むには権限が必要になる。
基本的に報告書の閲覧権限は、警務部と軍事部が保有している。
その二つに該当しない部署は少尉以上の階級を持つ個人に閲覧の権限を与えている。ということは、シチメンドウで言えば曹長である係長であっても少尉という地位からは一つ下になるから閲覧の権限はない。
だからシチメンドウは個人単位でも閲覧できる者がいない。
それでは、権限を持たないシチメンドウはどうすれば良いのか?
「あぁぁぁ駄目です駄目です! ロニさん許可が下りてませんってば!」
瓶底眼鏡をかけた金髪の女性司書、メリー・サンダースが紺色のケープを振り乱しながら回り込んで道を阻む。しかし、両手を突き出して断固通さないといった徹底抗戦の構えのメリーに対し、ロニの態度はあっけらかんとしている。
「許可? 貰ったじゃん」
「いえ、貰っていません!」
「昨日は通してくれたじゃん」