〇〇四

 しかし現場監督の話からすると、バフォメールという種類の山羊も森に棲んでいて、ミネラル分を求め、壁を舐め取りに来ている。

 それが原因で壁の補強作業頻度は三カ月に一回行われている。狼のせいではなく、山羊による被害が深刻化しているという現状。

 補強作業は外部の会社に委託していて、軍部からは必ず作業の監視役が派遣されるのが決まり。

 軍部が作業をせず民間に仕事を任せるのは、資金の流れを作るため。

 狼と山羊。

 共生の可否。

 壁の補強作業。

 ミネラル。

 外部委託。

 資金の流れ。

 何か、繋がりそうな気がする。けれども何かが足りていない。

 鍵になりそうなのは──。

 そこでハッと、何かに気付いたようにシルベスタは顔を上げる。そしてロニの方を見て口早に言った。

「おい、一等兵。この地域周辺の地図を貸せ」

 唐突な命令に、ロニは半ばキレ気味に「は?」と返したがシルベスタは意に介さず、口早に続けた。

「あと、外壁補強の過去の報告書はどこに保管されてある?」