〇〇四

「あのちょっと手握るとか勘弁してもらってもいいすかセクハラですか」

「はいぃ……」

 訂正。

 階級が上とか、そういう事はロニには関係ない模様である。

 閑話休題。

 ロニは午前中に就いていた任務の経過を係長に報告する。

「調査依頼がありました住民の失踪について報告しますんでお聞きください。あ、これ報告書です」

「はいはい、ありがとう」

「上官殿もどーぞ」

 言いながらロニは、シルベスタのデスクに歩み寄って報告書を机上に置く。

 タイプライターを打つ手を止め書類へ目を落とすと、丸で囲われた見慣れない文字が書かれているのに気付いた。

 ──……○特(マルトク)?

 この表記は一体何なのか。

 聞こうとするもロニは既に元の位置へ戻っていて知る事は叶わず、シルベスタは上げた視線を報告書へ戻した。

「では、報告をば」

「張り切ってどうぞ」

「まず前置きとして、失踪したのは十七人。内二人が軍部関係者で他が民間人です。軍部の失踪者の詳細は係長もご存じだとは思いますけど、」

「え? あ、うん」

「分からなかったら聞き流してくださいな」

 ──聞き流すな。

 シルベスタは心の中でツッコむ。

「軍部関係者二人については失踪までの足取りが掴めてる状態です。逆に民間人については今のとこ、三人しか分かっていないっすね」

「なるほど」

「でも、この三人には共通点がありんす」

「共通点というと?」