〇〇四
「へい。三人がいなくなった夜に、妙な音が聞こえたっていう証言が挙がってきてるんですよ。どんな音かと聞かれるとハッキリとは言えないんですけど、なんだろう……動物の鳴き声っていうか、まず人の声ではないらしいです」
「ふむ」
「その辺りの証言を検証するのが良さそうなんですけど、失踪の届け出の記録が曖昧なんですよ。時間も書いてなければ現場の状況もざっくりとしか書かれてないし」
「うーん、それは怠慢だねぇ」
「誰すかこん時の書記。警務部っすか。やっぱ警務部ってクソだわぁ」
お前の口の悪さも大概だ、とシルベスタは思う。
ただ、ロニの報告書に添付されている当時の記録を見るに、かなりお粗末ではある。
というかそれ以前に、シチメンドウは明らかに警務部の管轄にありそうな仕事までしていることにシルベスタは驚きを隠せない。
仮にもシチメンドウは総務部の庶務課に属する言わば雑用係の一派だ。
対する警務部は犯罪を取り締まる部署。戦争・戦闘へ繰り出す軍事部と双璧を成す軍部の花形である。
そんな、月とすっぽんとも呼べる関係にある警務部とシチメンドウ。
二つの部署に関連があるとすれば軍部という大きなくくりしか思いつかないが、察するに、解決するには情報が足りなさすぎるうえに解決できるかどうかも分からない案件(残飯)を仕事(エサ)と称して与えられていると思うのが妥当だった。
自分の報告書をぺらぺらめくってふてくされた顔をするロニに係長は言う。