〇〇二
声に気付いた現場監督が足場から身を乗り出して手を振る。
それにつられてシルベスタも下を覗き込むと、カーキ色の薄手のパーカーを羽織った女の姿が目に入った。
女は手を振りながら声を張り上げる。
「遅れてスミマセーン! ただいま到着でーす!」
作業員の一人だろうか。
それにしてはパーカーの下にワイシャツを着ているし、下はスーツパンツだし、足元は革靴だしで格好が場違いだと、シルベスタは自分を差し置いてそう思う。
「あれは……?」
一体誰だと尋ねると、現場監督はきょとんとした様子で、
「え? アンタの仲間だろ」
「…………は?」
数瞬の沈黙をもってきょとん顔を返すシルベスタに、現場監督は呆れながら言った。
「いや、だから多面担当のロニちゃんだろ」