〇〇二
一、右手の盛板にモルタルを乗せる。
二、盛板に乗せたモルタルを左手のコテで取る。
三、壁に塗る。
四、ムラが出ないよう均一に伸ばす。
現場監督に「うまいな。経験者か?」と聞かれたが、長いこと軍部にいるシルベスタに壁塗りの経験はないし、褒められても喜んでいいのか困る。
それにしても、どれだけ塗ればこの作業は終わるのか。
かれこれ二時間も塗り続けているというのに一向に終わる気配がない。終わる気配がないうえに、これのどこがすごい仕事なのかシルベスタには分からない。
それでも、軍部たるもの外敵を跳ね退け市民の生活を守るだけでなく、そこに住まう人々の生活を支え、交流を深めるのもまた仕事である。
ただ少なくともシチメンドウに集まる業務内容でいえば、民間の会社に良いように使われている感はすごかった。
今、シルベスタは街を囲う外壁を塗っている。
壁の所有者は軍部。
本来であれば軍部の管轄のもと軍部の人間が壁の整備にあたるのが普通だが、事業の落とし込みで民間に資金の流れを作って経済を活性させるという大人の事情があり、整備を外部委託しているのだった。
それに伴って、外部に整備を任せるには軍部から作業を監視する人間を選出しなければならない。
そのために現在の軍部の人員を割くのは簡単だ。
しかし外に出た時に発生する手当の計算が面倒。
ならばどうする?
アンサー、報酬固定の専門部署を作ろう。それが現在のシチメンドウなのだった。
壁の外周は一・八キロ。高さは約一〇メートルほど。
作業は五班に分かれて行われる。