〇〇一
「聞こえは良いが、まあ、人がいない分だけ一人一人の負担が大きいからね。ここシチメンドウは」
「シチメンドウ?」
聞き慣れない言葉にシルベスタの眉が動く。
「シルベスタ君は、この部署のことは人事からどこまで?」
「自分は何も」
それを聞いたグスタフは、頷いて言葉を再開する。
「多面担当というのは、軍部の総務部庶務課に最近作られた部署でね。庶務課で片付けきれない相談とか案件を受け持つのが主な仕事だよ」
あとは備品整理とか入れ替え、軍部施設の修理手伝い、街の行事の準備手伝いとかだね。とグスタフは続けて説明する。
要するに、
「面倒な案件とか、面倒な手伝いを押し付けられる部署ということですか?」
シルベスタの的確な言葉に苦笑するグスタフ。
「……パン食べる?」
「いりません」
グスタフが言ったことをまとめると、庶務課では手に負えない面倒な案件とか面倒な肉体労働とかを押し付けられる部署だから仕事の内容が『七面倒』。
そして総務部庶務七課・多面担当の『七』と『面』と『当』を取って『しちめんどう』。
合わせてシチメンドウ。
──…………ギャグじゃねえか。
シルベスタは拳を握り締めながら胸中で声を震わせる。
仕事の内容は末端中の末端。
いわゆる、窓際というやつだった。
臨時職員でも雇って回していればよさそうなものを、こんな部署をよく作ったなと思う反面、自分がそこに回されていては世話はないとも思う。
しかし不平不満を漏らしても現状は変わらない。
現在を作るのは過去の自分であり、現在の責任を負うのは未来の自分だ。