一、世界はそれを成り行きという

「シルバが政府の人(フリックさん)を嫌っているということが分かりました」

 そんなやり取りをしながら二人が歩く道は、建ち並ぶ居住家屋の間に飲食店が点在する通りだ。

 行きすがる人々の格好を見ると簡素な麻の服に身を包んだ人が多く、この区域は観光客より街の住民の方が多いことが分かる。

 また、足元に視線を落とすと違いが顕著だ。

 駅前の通りは観光客が頻繁に往来することから石畳で地面が補強されているが、この通りの舗装は特になく、土を平らに均しただけ。

 それでも、防塵用にと住民がまいた水の跡があちらこちらで確認できるあたり、住んでいる人々の工夫とたくましさが伝わってくる。

 ──こんな感じだったっけな……僕が住んでた所も。

 街の風景を見て思い出されるのは、ロニの故郷。

 木造建築家屋が点在する荒野の村の姿を追憶すると、ここの街並みはよく似ていた。

 そうやって感慨に浸っていると、隣で歩いていたシルバが急に立ち止まった。

「よし、ここにするか」

 シルバが見ている方に視線を向けると屋号を掲げた看板が目に入る。

「酒場? え、入るんですか!?」

 ちょっと駄目ですって! と制止するもシルバは聞く耳を持たず、トランクを担ぎ直して店の扉を開けた。

 店内にはガラガラのカウンター席といっぱいに埋まったテーブル席があり、分かり易く二分されている。席に着いている客は作業着姿の人間が多い。

「ロニよ。旅人は、知らない土地に来たらまずはその土地を知らなきゃなんねえ」

 シルバは、それに、と続ける。

「酒場っつうのは、情報が集まり易いだろ?」