一、世界はそれを成り行きという
3
駅前の通りを抜け、二、三本大きな道を跨ぐと人の数が明らかに減った。
「ちょっとシルバ、駅から離れすぎですよ」
隣を歩く大男を見上げながら注意を促すロニの表情は曇り気味だ。
「離れすぎたら問題あんの?」
「問題あんのって……フリックさんが馬車の手配を取り直してくれてるんですよ? 僕たちがいなかったら心配するかもしれないじゃないですか」
「いいんだよ。待たせときゃ」
「良くないです、戻りましょう!」
「あーもーお前っていっつもそうだよなー。人を待たせんのは嫌なのにブチ切れて列車壊したりよー。常識的なの? 非常識的なの? あるいはその両方なの?」
列車の話を持ち出されると反論のしようのないロニは、うぐぐと呻いて苦悶の表情を浮かべる。
「まあまあ、そんな顔しなさんな。馬車の手配なんて、すぐには終わんねえから」
「なんでそんな事が分かるんです?」
ロニの疑問にシルバは答える。
「まず、政府とか上流階級の人間ってのはステータスっていう、それはそれは面倒な認識を持っていてだな。見た目にこだわったりするわけよ」
「はあ」
「権力誇示も仕事らしいぜ。で、そのために装飾車なんて使うとなると普通は外に出してないから、車庫から出さなきゃならないのよ」
そこで時間を使うことになる。とシルバは説明する。
「あとは書類だな」
「書類?」
「ああ。政府の人間は、政府に付けとくもんだろ。代金を」
「経費って事です?」
「そんなところだ。分かった?」
なんだか大分穿った考えのような気もするが、