序章 青天霹靂/マ王降臨

 仕事が早く終わるのは悪い事ではない。むしろ喜ぶべき事である。

 しかし、

 ――こうも立て続けに起きていいのか?

 男は疑問だった。

 今回で三例目に当たる案件。


 マ王出現。


 男は左手で胸ポケットから携帯端末を取り出して画面に触れた。

 そのままインターネットに接続。とあるサイトにログインする。

 淀みない手つきでスレッドをクリックすれば、今回のミッションを受けるにあたり、情報源とした書き込みが数十件。


27.3.2025 15:12
[西区の赤下にマ王が住んでるんだてー]

27.3.2025 17:08
[中区ニ出タ出タ(・∀・)]

27.3.2025 17:47
[空北区で見たにょりーんww いやまじだってまじまじ。おれそんなウソとかつかないし、これ本当よう?]

27.3.2025 19:30
[そういえば今日、界区に出るという噂を聞いた]


 どこにでもあるような、たかがコミュニティーサイトへの書き込みである。

 こんな雑談の端に出てきている程度の小さな小さなやり取りなんて、無視しようとすればいくらでもできるのだが、

 ――書き込まれている場所が問題だ。まさか……

 男は画面上部に表示されるサイトの名称を見、ため息をついて改めて嘆く。


 ――GUILDのBBSだとはな。


 大手電子機器メーカーGUILD。

 それが、件の掲示板を管理する法人の名だった。

 GUILDは昨今における電子機器の発展と普及を牽引してきた企業であり、世界的に有名な会社でもあった。