序章 青天霹靂/マ王降臨
そしてスーツの男自身、GUILDに所属する人間だからこそ社員もしくは特別会員のみ利用が可能なBBSを信用していたという訳だ。
――それにしても解せない。確かに情報通り出現はしたが、手応えが無さすぎる。
事例三件が三件とも。全て一撃の下に結末を迎えていた。
――まさか、情報操作が介入しているとでも……?
様々な可能性が渦を巻く。
が、男はすぐさまその考えを抹消した。
何故なら、虚偽の記載は重大な規約違反だからである。GUILDが定める規約に対し、違反を犯した者は強制退会を余儀なくされる他、法的な処置も下されるようで、悪ふざけをするにしてはペナルティーが重すぎる。何よりメリットが無い。
実際、つい最近も一掃(パージ)という名を冠した違反利用者の大量強制退会が行われたばかりだ。違反行為に片足を突っ込んでいる強制退会対象者予備軍の利用者に対しては、この上ない見せしめだったはずである。
それを考慮すると虚偽記載や情報操作の線は薄い。
――《マ王》か……。一体、何だと言うのだ。
いくら思考したところで尤もらしい理由も、言い訳すらも浮かばない。
ひとしきり脳を回転させた男は溜め息一つもらし、携帯端末の画面を再びタッチ。アドレス帳を展開すると《ジュリア》の表示がポップアップ。
通話の項目をタッチして耳に当てた。
電子音がループする。
*
天を衝く摩天楼が夜の闇に浮かぶ。無数のそれに端々を侵食された満月が、まるでそんな事は無関係と言わんばかりに煌々と輝く。
上空を彩るビル群と満月、この二つの存在はいつもの街の風景だった。