第一章 日常茶飯/街の風景A
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「ふおお。この苺すっぱいのお」
「あんまり食べるとお腹壊すぞー」
場所は戻り、新東京市西区・テナントビル前広場。
広場の装飾の一部である階段に、名綱と銀髪幼児の二人は並んで座っていた。
この組み合わせ、現在時刻深夜零時過ぎの夜の街という状況を鑑みれば、とてつもない違和を感じる。
当人たちは知った者同士であるためどうと言うことはないのだが、目の前の通りを補導された女子高生五人が警察官に連れられて歩いているのを見ると、その対象が自分たちに向けられる可能性もある事を思い出させる。
通りの方を指差しながら名綱は言う。
「ねえ。あたしら捕まんないかな?」
対する銀髪幼児は口に含んだ苺を飲み込みながら、つらつらと述べる。
「らいじょぶらろう。ごきゅん……ふう。ありゃアバタ―のなりすましで中身はリアルマネー目的の違反プレイヤーと見た。電脳警察(サイバーポリス)も、しょせんは現実世界からログインしている普通のけーさつかんに過ぎん。わっちら女子供など眼中にもなかろうて」
「いや、問題大有りでしょーが。そうだとしたら、あんた、補導されるんだかんね」
「ぬ? ほどう、される?」
「そそ」
「なんと『ほどう』に『される』、とな………………おお、なるほど。そんな恥じらいもへったくれもない所業をさも当たり前のように……歩道プレイだな。わかるぞ」
「フヒヒ確認したいんだけど、あんた本当に幼稚園児なんだよねー?」
そんな感じで如何わしい話をのらりくらりと繰り広げる二人であったが、閑話休題。名綱は率直な疑問を幼児に投げかける。