第一章 日常茶飯/街の風景A
ゲームには何かしらの目的や遊び方が存在する。しかもそれは図らずとも明確である。
しかしアフター*ダークには、そういった暗黙に込められた制作サイドの意図が見えない。
そう、ゲームの目的が不明瞭なのだ。
アフター*ダークにハッキリとした目的や遊び方が覗えないのは、レンタル機器に付属された取扱説明書の内容や現実世界に張り出された広告を見れば分かるのだが、それでも──────『ENJOY GAME!!』の一言だけというのはいかがなものか。
つなぎの少女は、そのゲーム性について個人的に解釈している部分がある。
ゲーム説明、遊び方や目的を明確化しないのは、そういう類のゲームだからなのではなかろうかと。
世界観を見る限り、現実世界と何ら変わりない。
と言うことは『生きる』という普遍的な事が、あえて言えば目的に当てはまりはしないだろうかと。
このゲームの本質はあのふざけた説明書や広告の通り、楽しむことにあるのでは?
それに併せて少女は、このアフター*ダークにおいてあらゆるゲームの要素を感じた事がある。それは例えば稀に発令される討伐ミッションだったり、例えば他プレイヤーとの戦闘だったり、事件の謎解き、恋愛等々。
カテゴリーや従来規格という、ちっぽけな存在に当てはまらないからこその不明瞭。
つまりはノージャンル。
――だけど我ながらよくできた言い訳だわフヒヒ。予測の域は脱しないからねー。
少女は頭に血が昇りきる前に体を起こしてスマートフォンを再び確認する。