第一章 日常茶飯/街の風景
ただ、金髪男の軽薄で軽快で軽蔑的な発言は止まらない。腹の奥底からこみ上げる意味不明な感覚が、男の挙動にますますターボを掛けている。実際問題その正体がなんなのか、男自身、知る由もないのだが、湧き上がってくる不思議な不思議な感覚にその身を任せながら、
「TEN☆CHUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUU!!」
まるで映画の悪役のように口角を最大限に釣り上げながら、金髪男は奇声をあげた。
そしてこの街は──新東京市は知っていた。
この男がこの感覚を認識した後は、決まって轟音が鳴り響くと。
しかし、何のことはない。だってそれすら街の風景なのだから。
*
次の瞬間、この街で絶対に手を出してはならない存在に気付いた通行人の一人が、これから起こるであろう惨劇を予測しながら全身を恐怖に震わせ、だがそれでもなんとか力を振り絞って警告の大声を張り上げた。
「――ダ、ダズだ……! 理不尽大王が出やがった! 全員離れろ殺されるぞ!!!!」
それを皮切りに、一斉に逃げ惑う人々。
喧騒全てが悲鳴に変わり、夜闇を埋め尽くす。
しかし、時既に遅し。駅前通りの中心にいる金髪男ダズは、固く握り締めた右拳を地面に向かって振り抜いていた──
*
岩石を叩き砕くような粉砕音が響くと同時、小さな地震と錯覚してしまう程度の揺れが駅前通りを支配した。
それに連動して四方から人々の悲鳴が飛ぶ。