第三章
──たとえばこれは、他人の言葉。
母は死ぬ前に「父さんと仲良く暮らしてね」と言った。レビは母親の遺言も捨てることになる。
悪いのは父だとか。最初に裏切ったのは父だとか。母が死ななければこんなことにはならなかっただとか。正論のような言い訳ならば、いくらでも並べることができる。けれど、言い訳程度で人殺しを容認できるほど、レビは強くもないし残酷でもなかった。
できることなら殺したくはない。けれど、殺さざるを得ない。
生きていたいと、心の隅ではずっと思っていたのだから。
「あたしは、レビだよ……おとうさん」
視界はぼやけて何も見えなかった。
ただ、人を斬った感触だけが、レビの手にあった。