第三章

 家族という繋がりを、ないものとして考えてみたら?

 父が抱いている母への思いを、ないものとして考えてみたら?

 自分だけの都合で、自分だけの理屈で考えてみたら?

「他人の正義を代行するものとして使われるのが、お前の正解か? レビ」

「無駄な思考を今すぐやめろ! 我が正義!」

 〈十三番〉とエイド。二つの声が、同時に放たれる。

 片や、坦々と。片や、叫ぶように。

 問いに答える余裕はなかった。命令に従うつもりもなかった。

 代わりに、大鎌の柄を掴んで、応える。

 エイドの意志は、レビの思考を消し飛ばそうと躍起になっていた。意志も感情も消し去る圧倒的な支配欲が、外部からねじこまれてレビを縛ろうとする。

 しかし、それは今のレビにとってそれほど脅威ではなかった。原因は、死神の鎌。移行と変容と司る【十三番】の鎌だ。

 体内の象徴を通じて流れるエイドの意志を全て排除できるわけではない。けれど、弱まっているだけでもレビにとっては十分だった。今のレビには抵抗の意志がある。そして、エイドが使う象徴である剣以外の武器がある。

 レビとエイドをつなぐ鎖を断ち切ることはできない。であれば、レビが罪を被らなければ自由への道はない。鎖の先端を掴むものを、殺さなければ。

「あたし、は──」

 ──たとえばこれは、他人の思想。

 エイドを殺さなければ自由にはなれない。レビは父殺しの汚名を背負い続けることになる。

 ──たとえばこれは、他人の都合。

 エイドはレビが正義を代行することを願っていた。レビは父親を裏切ることになる。