第三章
留め具付近を裂かれたらしいローブは、〈十三番〉の動きに振り回されて大鎌を背負うベルトにぶら下がって止まる。下に隠されていた体はローブと同様の黒い衣服で覆われていたが、その両肩から先、袖の中にはなにもなかった。余った袖部分は固く結ばれ、両腕が欠落していることを強く意識させる。
「俺が【十三番】の力を得ようとした理由は、浅はかな復讐のためだ。故郷と家族と恋人を失い、敵の前から逃げ出して、それでもどうにかして復讐したいと思った結果がこれだ」
再び、レビの意志とは無関係に、右腕が剣を振るう。
繰り返される攻撃と回避。その間も、〈十三番〉は言葉を揺るがさない。
「得た力で復讐を果たした。代わりに、名と両腕を失った。なくしたものは多いが、これが最善の道だったと今でも思っている」
平坦な口調で語られてはいるが、その裏には深い悲しみが垣間見えた。手を止めたい、という思いがレビの中で芽生えるが、今が好機と感じているらしいエイドは、レビの感情をことごとく抑えこんで消し去ろうとする。
止めたいと思っては思いが消え、悲しいと感じては感情が去る。
幾度となく繰り返された、レビにとっては日常的な場面だった。何を思っても、何を感じても、その直後には全てが無に帰してしまうのは、もはやレビからすれば当然のことでもあった。
それならば、何も思わず、何も感じなくなった方が楽なのではとも、何度も思った。