第三章

 流れるように続く声に、息のあがった様子はない。ひとつ間違えば死の危険性もあるというのに、鎌を手にとる様子もない。

「【十三番】が司る役割は、死だけじゃない。それに伴う再生と、物質界から霊界への移行、変容も含まれる」

 首を狙った一撃は、上体を反らしただけで避けられた。血の一滴どころか、髪の一本すら散らすことができない。普段から相手にしているような者なら、何十回と殺せるほどには剣を振っているはずなのに。

 じわり、とレビに恐怖心が湧きあがった。殺意を向けられるだとか、誰かを殺してしまうなんていう、感じ慣れた恐怖ではない。

 〈十三番〉という個人に対する恐怖。必殺の一撃を回避し続ける男に対する恐怖。

 そして──回避の間、目を合わせたまま一瞬たりとも視線を外さない金の瞳に対する恐怖。

 それらが消えることなくレビの中に留まっているのは、感情をなくすように仕向けていたエイドも同様に恐怖しているためだろう。必要以上に増幅された感情にまかせ、レビは鳴りそうになる歯を食いしばって剣を振るう。

 本能的な判断だったためか、切っ先は胴体に向けられた。首を狙った連撃の合間に放たれたこともあって、〈十三番〉の回避が間に合わない。体をひねるようにして致命傷は免れたものの、遅れたローブの下、右の肩口に、

「──?」

 刺さらなかった。

 黒いローブだけを貫いた切っ先に、それ以上の手応えがない。皮膚を裂き、肉を貫き、骨に当たる感触が欠落している。布の生地を斬っただけの、空振りに近い手応え。

「これは俺の話になるが」

 唐突に、〈十三番〉は話を切り出した。