第三章

 ここまで堕ちていたなんて。

「……おとうさん」

「無駄なことを喋るな!」

 叩きつけるような言葉と同時に放たれた平手が、レビの頬に直撃した。

 衝撃を受け止めきれず、レビは足をよろめかせて壁にぶつかった。深くかぶっていたはずの帽子が床に落ちる。

「腹に天秤、額に第三の目、首の付け根にはロープのネックレス、外部からの鍵として両刃の剣……これでもまだ足りないか! 頭部に白蛇を埋め込んでもいいんだぞ!」

 男が叫ぶ。

 レビをモノとして扱い続ける男は、放つ言葉にもその意志がにじみ出ていた。

 ヒトとして見られない。ヒトとして扱われない。それなのに、妙なところで中途半端に手を抜いている男に対して、レビは腹の底から怒りを感じていた。

 白蛇ならば、瓶詰めにされたものがどこかに置かれていたはずだ。頭部にそれを埋め込まない理由がどこにある?

「慈悲でも……見せてるつもりなの」

「なんだと?」

 血の味を感じながら、レビは顔をあげた。赤い前髪の隙間から、空色の光が放たれる。

 ──第三の目。頭蓋を削って埋め込まれたガラス玉のような眼球が、生気のない視線を男へ向けていた。

 レビの体内には、正義に関わる象徴が埋め込まれている。内臓の一部を切除して腹部に収まっているのは、公平を表す天秤。額にある眼球は、真実を見通す第三の目。ネックレスのように首の付け根に埋められたロープは、清廉と潔白の象徴。

 実の娘であるレビを、男──エイドがモノとして扱い始めて久しい。きっかけは妻、レビからすれば母親の死で、それ以来、四年間にわたってレビは正義の象徴として扱われてきた。