第二章

 かろうじて紡ぎ出すことのできた声は、自分のものとは思えないほどに掠れていた。

 昨晩、三人の男を斬殺した場面が脳裏でまたたく。レビの意志には従わず、誰のものとも分からない正義を振りかざしたあの瞬間。何も考えず、何も感じずに剣を振ったあの刹那。

 浴びてもいない返り血の生ぬるさを感じて、レビは思わず頬に手を当てた。

「変わった魔術を扱う娘がいると聞いた」

 コツリ、と。死神のような男の足音が、狭い路地に響く。

 レビは逃げ出すことすらできず、その場に立ち尽くした。逃げられない、どころか、逃げても無駄だと思ってしまった。生きている限り死から逃れられないように、死神の姿をした男から逃げ切ることは不可能なのではないか、と。

「何にも臆さず、一片の感情も見せず、一太刀で相手を殺める娘がいる、と」

 繋がりが、見えない。

 男の話を理解するための、知っている前提として話されている知識を、レビは持っていないようだった。死神のような男と、おそらくはレビが使っている──というよりは、レビに使われている魔術の間には、繋がりがある。

 それを知らないから、レビには男の話が繋がっていないように聞こえてしまう。

「殺しの動機など問わないが、オリジナルを作った人間が模倣の理由を知りたいと言っていてな」

「オリ、ジナル?」

 掠れた声で、再度問う。

 前提として必要な知識。それがなければ、レビは男と会話を成立させるどころか、男の話の半分も理解できない。

 かろうじて分かることといえば、レビに使われている魔術が何かを模倣したものだということくらいだろうか。