第五章

 影の魔女は、今までのルールを使って魔女を殺すことができる。

 魔女を殺すための魔女。それが、影の魔女が魔女狩りの魔女と言われる所以だ。

「だから言ったんだ。裏は取れてるって」

 ベアトリーチェが駅前に店を出していたのは、駅員の恋人がいたから。

 杏子は昼間、町を歩いて存在を漂わせている時、駅近くで見てしまっていたのだ。ベアトリーチェとその恋人が寄り添っているところを。

 彼女はおそらく、今いる恋人と一緒にいるために若さをかき集めていたのだろうと杏子は推測する。

 魔女は、不死であっても不老ではない。

 彼女たちは中世ヨーロッパ時代の産物であるから、実年齢としては五百歳以上となる。

 これは魔女全員に言えることだが、彼女たちは大切な人の死というのをいつもそばで見てきたのかもしれない。そして、時代時代で新たなパートナーを見つけていたのかもしれない。

 女性はいくつになっても女性だ。

 ともすれば、恋人のために若くありたいと思って契約違反を犯してしまったのも何となく分かる気がする。許容とは別として。

 悪事は悪事。

「さあ、どうしよっか?」

 首を縦に振るベアトリーチェ。観念したことを体で表現している。

 しかし悪ふざけ。杏子にはもとより命を奪う気なんて微塵もなかった。